苔のある日常

2021.01.05

苔と塩の相性は?海の近くに住む方は必見!

みなさんこんにちは。
苔と暮らす運営チームの北條です☆
皆さん塩はお好きですか?

塩は好きかということを考えると、家康と英勝院の話を思い出します。

家康が家臣に「一番おいしいものはなにか?」と問いかけ、皆がそれぞれに好きなものを説明します。
そばにいた英勝院は「塩です。塩ほど調法でうまいものはありますまい」と回答。
皆が感心しているなか、更に「では一番まずいものは?」と聞くと、
「それも塩です。どんなに美味しいものでも塩が多すぎれば食べられません」と答えます。
出典:故老諸談

非常に面白い回答ですよね。
いかに場作りが上手な方だったのか想像できます。

さて、今回はそんな塩と苔の関係性についてお話します。

苔と塩、苔は塩害に強いの?

植物に塩はイイ!なんてことはまず聞きません。

むしろ塩は植物に対して悪影響を及ぼす、ということの方がよく聞きます。

これを塩害と言います。

 

この事実を知っている人が多いからこそ、自宅が海に近く庭に苔を植えようとした場合悩む人が多いのだと思います。

そこで塩害が苔へ及ぼす影響、その対策をご紹介します。

ではそもそも塩害とはなんなのでしょうか?

 

塩害とは

ざっくり言ってしまうと塩の多い土では植物に害があるよ!ということです。

塩分が高いと土壌中の浸透圧が増加し、植物の根の吸水性能が落ち水分不足に陥ります。

難しいので噛み砕くと、塩水って飲んでも飲んでも喉が乾きますよね?

それと同じ状況が植物でも起きてしまうのです。

 

これは苔でも同様です。

特に他の植物同様に維管束を持つスギゴケではこの傾向が顕著に現れます(一般的な苔は維管束を持ちません)。

試しに下記のような試験をしてみました。

 

試験:スギゴケに塩水を与えるとどうなるか?

スギゴケ(ウマスギゴケ)に塩水を継続散水し、スギゴケがどのように変化するかを経時的に確認する。

 

試験方法

使用材料

黒土約1L

スギゴケ(ブランク区and試験区)

水(水道水)

試験用塩化ナトリウム

※ブランクとは比較対象区、つまり塩などを与えず普通の水を与えている区です。

 

試験方法

週に1度(金曜)下記試験区にそれぞれの溶液を散水する。

ブランク区 : 水道水

試験区   : 濃度500~1,000ppmの塩水(ちなみに海水は約40,000ppmです)

散水方法はバケツから流し込みとする。

散水時に合わせて写真を撮影し、経時変化を確認する。

 

結果 

下記が試験開始3ヶ月後の写真です。

どうでしょう。

試験開始時と比べて、塩を与えた試験区ではパサパサしている印象を受けないでしょうか?

 

はっきりと吸水できていないことがわかります。

理論的にはやはり浸透圧の影響かと思います。

 

スギゴケは維管束のような組織があるため、浸透圧の影響を大きく受けたのだと考えられます。

 

具体的にどうすれば大丈夫?

ここまで塩は苔に悪影響!というお話をしてきましたが、ではどうすれば良いのか、どうであれば良いのかもお話します☆

 

その地域の潮風の影響によりまちまちですが、およそ1キロ海から離れていれば苔の施工は可能かと思われます(土壌の入れ替えは必須)。

 

例えばこちらのお客様の家ですが、苔が綺麗に育っています。

海からの距離は約1キロ程度です。

他のお客様のお庭もこれだけ離れていれば問題ないことが多いです。

この程度離れていれば苔を安定して生育できる可能性がぐっとあがります。

 

塩害対策によく使われる石灰はやめたほうが無難

実際の農地では塩害対策に石灰を混ぜ込んで土壌改良をすることがあります。

 

これは普通の土地や農地に対しては非常に有効ですが、苔の場合はやめておいた方が無難です。

 

多くの庭用の苔は弱酸性(PH3~6)の土壌で育つものが多いです。

しかしながら石灰はPH12と非常に高いのです。

 

そのため土壌に石灰を混ぜ込むと、非常に苔の生育しにくい土壌になります。

塩害の土壌でもこれらと同様のことが起きると考えられるため、やめておいた方が無難です。

 

その他様々な方法

「そんなこと言われてもうちは海から近いよ!無理だよ!でも苔庭楽しみたいよ!」という方にもいくつか手段をご提案いたします。

 

①塀で囲う

シンプルに物理的に壁を作ることで塩害のリスクを下げます。

長期的に見るとやはり塩が溜まっていってしまうので難しいかと思いますが、短期的には有効な手段かと思います。

 

②室内に庭を作る

これは家の中に坪庭のような形で庭を作ることです。

この方法は家の雰囲気ががらりと変わりおしゃれな雰囲気になること間違いなしです。

家の中ということで非常に自由度も高いです。

 

この写真は以前私が展示会で作った庭ですが、このような形にすることも可能です。

むしろこれは屋外では難しく室内でなければできないという、短所を長所とした新しい庭の形です(この庭は浜名湖花博で作ったものです。県知事にも大変良い評価をしていただきました)。

 

同時に苔の性能をフルに使っています。

 

苔の単体の小ささ、体の表面から水分を吸収するというその形態等です。

 

他とは違う庭を作ってみたい、未来の庭を作ってみたいという方がいらっしゃいましたら是非お声がけ下さい☆

 

兎にも角にも言いたいこと

海が近いからと諦める必要はまったくありません。

むしろ新しい技術が生まれるチャンスでもあります。

先にも挙げた英勝院のお話にもありましたが、その状況をどう活かすか次第だと思います。

不利な状況であればあるほど燃えませんか?

庭に対しても同様「負け戦こそおもしろいのよ!!」といった姿勢で何事にも向き合いたいと考える日々でございます。

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